同窓会とは、初恋が終わるための儀式だ。僕はそう思う。
小学校の頃の僕は冴えない奴だった。
「おとなしい子ども」といえば聞こえはいいが、いわゆる陰キャってやつだ。
それでもあの頃は、僕にとって輝きにあふれた毎日だった。
クラスのみんなと仲が悪かったわけではないし、もちろん、好きな子だっていた。
その好きな子も、たぶん僕のことが好きだったと思う。
だがそこは冴えない***。
しょうもないガキだった僕には、告白だ、彼氏だ彼女だという勇気などはもちろんない。
小学校を卒業して私立の***へ進学した僕は、
その初恋の人とは何も起きないまま離れ離れになった。
しかし***在学中に1度だけ、彼女に会ったことがあった。
最寄駅からの帰り道、自転車を漕いでいたら、
小学校の前でおなじく自転車に乗った彼女とばったり遭遇したのだ。
「あ!しんくんやあ~!!」
「あ……久しぶり。元気やった?」
冷静そのもの、という声色を装ったつもりだったが、
ビャックンビャックンと暴れまわる心臓が、
今にもあばらを突き破って出そうだった。
彼女がぼくの腕をさわってこう言った。
「わあ~……しんくん、背え、伸びたんやなあ。かっこいい」
耳がじんじん痛くなって、ほぼパニックだった。
初恋の相手だから、もちろんこれまでもかわいいと思ったことはあった。
けれど、こんなに綺麗な子だっただろうか。
笑うと下がる目尻も、つやつやの黒髪も、小学校の時より魅力が増しているように思った。
そして僕は、彼女の体つきが、妙にふっくらしているのに気が付いた。
腰回りはもちろんだけど、特に、上半身の……。
「最近な、つらくて……しんくんのことよく思い出してた」
「えっ」
彼女の顔を見ると、確かに少し、悲しそうだった。
なんと言葉をかけるべきか考えていたら、
彼女は、自分の大きな胸に手を当ててつぶやいた。
「しんくんなら、私にひどいことせえへんのにな」
そこから先、なにを話したのかは覚えていない。
とにかくその後の僕は、無我夢中に努力した。
***を成績トップで卒業し、そのまま***へ進学、
そして大学受験も完璧にクリアした。
その間、彼女の噂は良いものも悪いものも何度か耳にした。
だけど、会いにはいかなかった。成人式の後の同窓会にもいかなかった。
なぜなら、まだ僕は、彼女を守れる人間ではなかったから。
そしてやっと、君に会いに行こうと思った。
自転車ですれ違ったあの日から13年が経った秋のことだった。
起業した会社が軌道に乗り、ようやく自分を誇れるようになった僕は、
同窓会の知らせに出席の返事をした。
もしかしたら長く付き合っている彼氏がいるかもしれない。
結婚しているかもしれない。
もしかしたら、僕のことなんか忘れているかもしれない。
君がいま幸せなら、何も言わずに帰る。それでいいんだ。
だけどもしそうじゃなかったら、僕は言うんだ。
ひらり、君のことがずっと好きだったって。
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